【夜行快速・ムーンライトながら】後継車両はどうなるのか予想してみた&今夏で廃止という噂も・・・
国鉄時代の夜行普通列車「大垣夜行」が運行されて以来、様々な変貌を得て、今なお多くの青春18きっぷユーザーに愛されている国内唯一の夜行快速「ムーンライトながら」。国鉄時代から活躍する特急車両・185系の老朽化、および2020年度での引退が決定していることから、新型コロナウイルスの感染拡大で今夏の運転がなかったことで廃止されてしまうのでは?という噂も出てきています。
今回は、そんな夜行快速「ムーンライトながら」の後継車両についていくつか候補となる車両を挙げて予想していこうと思います。
1.夜行快速「ムーンライトながら」とは?
夜行快速「ムーンライトながら」とは、夏休みや冬休みなどといった多客期に、東京〜大垣(東海道本線経由)で運行される国内唯一の夜行快速列車です。国鉄時代の夜行普通列車「大垣夜行」から代々続く歴史のある列車で、かつて「大垣夜行」が1968(昭和43)年10月のダイヤ改正(通称:ヨンサントオ)に合理化のため廃止が決定すると、廃止反対の要望書が国鉄本社に多く寄せられたり、当時の国鉄総裁・石田礼助が「この夜行列車は存続させるべきである」と判断したりするなどして当時の臨時急行「ながら3号」を普通列車化する形で存続したことは当時の人々の間で話題になりました。
2.今夏で廃止となる噂も・・・
昨今における新型コロナウイルスの感染拡大により、今夏の運転は見送られる形となりましたが、先述した185系の老朽化・引退決定により、廃止されてしまうのでは?という噂も出てきています。理由を2つに分けて書いていこうと思います。
理由1:大して儲からない
まず、第一として、この列車のほとんどの乗客は、青春18きっぷを乗車券として利用します。
ご存知の通り、青春18きっぷは日本全国のJR線の普通・快速列車が5日間乗り放題となるフリーきっぷです。JR各社で売上の配分が決められていると思いますが、「ムーンライトながら」に青春18きっぷで乗車する乗客が多いからというのが理由で、JR東日本とJR東海の売上配分が増えることはなさそうに思えます。
そうなると、「ムーンライトながら」の実質的な売上は、指定席券×乗車人数+東京〜小田原の乗車券×乗車人数、ということになります。
「ムーンライトながら」の指定席券は530円、定員は620名(185系波動用編成:6両+4両)ですので、計算すると、
530円(指定席券)×620名(定員)+1,520円(東京〜小田原の乗車券)×620名(定員)=1,271,000円
となります。10両編成の列車を夜通し走らせて、売上が約120万円では、JR側にすればあまり儲からない列車ですね・・・
しかし、この列車に乗車する青春18きっぷの利用客が、全員東京〜小田原の乗車券を持っているとは限りません。なぜなら小田原まで青春18きっぷ1日分を利用して来るような方も中にはいらっしゃるからです。これを加味すると売上はさらに減る、ということになります。まあ、青春18きっぷの売上もあるでしょうから、上記の計算結果のような売上額から、極端に減るということはないと思いますが・・・
理由2:深夜の客扱いが必要
忘れてはいけないのが、「ムーンライトながら」が深夜に停車する駅(沼津・静岡・浜松)の客扱いに関する費用です。
「ムーンライトながら」は、上り列車・下り列車共に、静岡県内の主要駅(沼津・静岡・浜松)に深夜時間帯、つまり終電後〜始発前の時間帯(おおむね午前1時〜午前4時)に停車します。時刻表にも記載されている正規の停車駅ですので、当然、これらの駅での乗り降りができます。つまり、これらの駅には、この列車に対応するための駅員を配置しておく必要があるわけです。
現在、国内唯一の寝台特急として運行を続けている「サンライズ瀬戸・出雲」がありますが、深夜時間帯の停車駅は浜松のみです。
これら2つの理由をJR側がどう見るかが大きなポイントとなりそうです。
3.夜行快速「ムーンライトながら」の後継車両はどうなるのか?
さてさて、本題から大きく外れてしまいましたが(笑)、「ムーンライトながら」にも運行継続の可能性は十分にあります。「ムーンライトながら」が運行を継続するという前提で後継車両はどうなるのか、予想していきたいと思います。
①E257系2500番台
これが1番自然な案なのではないでしょうか。先日大宮総合車両センター〜修善寺の回送でJR東海区間(熱海〜三島)を走行した実績がありますし、定員は2500番台を2編成併結させて10両編成とすれば596名ですので、185系の620名に比べると若干少なくなるものの、荷物置き場、窓側席へのコンセントの設置やバリアフリー対応トイレなど、設備面の大幅な向上が期待できそうです。
ただ、4編成しか存在しない上、500番台時代に装備していた幌を外してしまっています(走行自体は可能です)ので、その点を考慮するとやや困難かな・・・とも考えられます。
特急「踊り子」の基本編成である2000番台とする案も考えられなくはないですが、こちらはグリーン車を連結している分普通車の定員が減ってしまうので、こちらが充当される可能性は極めて低いでしょう。
また、グリーン車を指定席での運用とすると青春18きっぷでは利用できなくなりますし、自由席での運用とすると東京駅、あるいは大垣駅で大きな混乱、または混雑が予想されます。
②215系
2020年度のダイヤ改正で湘南ライナーが全車指定席の特急列車に格上げされると定期運用を失う215系を「ムーンライトながら」に充当させることも考えられます。定員も普通車が830人、グリーン車が180人の計1,010人ですから大幅な定員増が可能となります。
ただし、普通車の座席は全てボックスシートであり、前任の185系と比べると居住性ではかなり劣ります。グリーン車はリクライニングシートですが、指定席の運用としてしまうと青春18きっぷでは利用できなくなりますし、自由席での運用とすると東京駅、あるいは大垣駅で大きな混乱、または混雑が予想されます。
また、JR東海(熱海〜大垣)を走行するのでATSの設置工事や乗務員訓練も必要になって来ますので、このあたりが課題です。更に、終点の大垣駅で接続する普通列車・米原行きは311系8両編成での運転ですので、座席定員は472人。大垣ダッシュが今まで以上に殺伐としたものになりそう・・・(^_^;)
③373系
前任の373系を再び充当させることも考えられます。
座席には185系にはないフットレスト、カーテン(窓側席のみ)がありますし、車端部には4人がけ・固定テーブル付きのセミコンパートメントもあります。
ただし、2012年3月のダイヤ改正で東京〜静岡の定期普通列車が廃止されたのに伴い、ATS-PがATS-PTに換装されている上、普通列車から特急列車、臨時快速と幅広く活躍している現状、運用に余裕がありませんので、現実性は薄いのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
夜行高速バスに対抗するために、各地で運行されていた夜行快速。次々と廃止され、2014年には「ムーンライトえちご」(新宿〜新潟)が、2019年には「ムーンライト信州」(新宿〜白馬)が運行休止(事実上廃止)となりました。
そんな中で、唯一運行を継続しているのが「ムーンライトながら」(東京〜大垣)ですが、この列車はいわば「最後の夜行快速」。青春18きっぷシーズンに格安で長距離を移動できる最後の夜行列車となってしまいました。
「ムーンライトながら」が廃止されてしまったら、格安旅行をする方にとっては、長距離を鉄道で移動するという選択肢はなくなってしまうでしょう。
もちろん、1日(2,410円)で東京から九州、東北へ行けるという青春18きっぷの優位性は残りますが、よほど鉄道が好きな方でなければ、そんな地獄のような乗り継ぎはしたくないはずです。もっとも、青春18きっぷ1日分の値段に少しプラスすれば、夜行高速バスで快適に移動できるわけで・・・
とはいっても、「夜行列車」の重要な文化を後世に受け継いでいくことは、非常に大切なことなのではないかと思います。というのも、「TWILIGHT EXPRESS瑞風」や、「四季島」といった豪華クルーズトレインに乗車する方々の大半は、若い頃に夜行列車というものに惹かれた、あるいはそれを使って旅をしたことがある人なのではないかと思うからです。
夜行列車で旅をしたことがない方が、中高年になったときに、様々な旅行の選択肢の中から、豪華クルーズトレインの旅を選ぶでしょうか。
そういう意味では、何とか運行を継続して頂きたいものです。
というわけで今回は、国内唯一の夜行快速「ムーンライトながら」の後継車両について予想してみました。運行するにあたって、JR側にとってはデメリットは多いかもしれませんが、何とか運行を継続して頂きたいですね・・・
最後までご覧いただきありがとうございました!